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標準的な47の音度名

「基礎的な25の音度名」に続く第三段階は、下記の表のように47個の音度名を用いる拡張である。

基準音 +1 +2 +3 +4 +5 +6 +7 +8 +9 +10 +11
ネ・サ・ロ ノ・シ
ラ・ギュ
ス・リ
ガ・ミュ
シャ・ル
ギ・メ
レ・グ
モ・ピュ
ゲ・マ
ペ・デャ
ゴ・ミ
ポ・デュ
ギャ・ム
パ・ド
ミャ・ピ
ダ・ニュ
プ・ディ
ナ・シュ
ピャ・ドゥ
ニ・セ
デ・ヌ
ソ・リュ

この表では、「異名同音」がさらに増えて半音あたり原則4つずつになっている。

分かりづらいので、分かりやすいように行を分けると、次の表のようになる。

音度 基準音 +1 +2 +3 +4 +5 +6 +7 +8 +9 +10 +11
ⅶ (N)             ニュ
ⅵ (Dh)           デャ デュ ディ ドゥ
ⅴ (P)         ピュ ピャ  
ⅳ (M)     ミュ ミャ      
ⅲ (G)   ギュ ギャ        
ⅱ (R)             リュ
ⅰ (S) シャ           シュ

25の音度名のときと同じように、横の列方向が、基準音からの音程(ピッチクラス)を半音刻みで表しており、縦の行方向が、旋法の何番目の音かを表している。

先に出た音度名25個は、そのまま共通する。主音「サ」から「完全」「短」「長」の音程にある背景が緑色のマスと、「増」「減」の音程関係にある背景が黄色のマスである。そこに、(1).「増/減」音程よりもさらに外側に変化した派生音が追加され、(2).1つ1つの音度が半オクターヴもの音高幅を持つのが特徴である。

通常の全音階であれば、このような音程の派生音は絶対に登場しない。また、五線譜の書き方のルール上も、通常はシャープやフラットは最大2つ分までで、なるべくそれらを付けないで済む別の音名の音として書くので、こういう表現を必要とすることはまずない。

それでは、これらの拡張は何のためにあるのだろうか。それは主として、七音を標準としつつも、全音階を前提としない旋法のためである。

短二度(半音)が複数個連続したり、増二度(半音3個分)や重増二度(半音4個分)が含まれるような音階が、標準の幹音のセットとされても、その派生音までの音度名が機能するように、必要十分な幅を持たせると、このような形になる。

実際のところ、数学的に、オクターヴ12半音単位で、七音音階のどのような旋法を作っても、この音度名でカバーできる(註1)。そして、音度名を単に連ねるだけで、それがどのような旋法かを概ね示すことができるのである。そうして示すことは、他の示し方、例えば、音高を特定して五線譜にサンプルを書いたり、その音名をシャープやフラットを付けながら読み上げたりする示し方より、時として簡便であり、しかも旋法の本質をより良く示すものである。

副次的には、音度名を歌う上において、一つの音符に付けられる装飾音の音程幅が拡大し、音度2つ違いに相当する領域にまで広げられたことで、表現の幅が広がっている。

五線譜に表記される場合を想定すると、例えば次のようなケースが考えられる。Dを主音「サ」としているとして、ⅳ度音にあたるGにダブルフラットが付き、ⅴ度音にあたるAにダブルシャープが付く。そうすると、ⅳ度音は「メ」と読まれ、ⅴ度音は「プ」と読まれる。もしもそれらを幹音とする7音音階があるならば、それは「↑サラガメプドゥヌ」と表現される。長音階の「↑サリグマパディヌ」と全く変わらないシンプルさである。しかし、「メ」と「プ」の間は半音6個分の開きがあり、他の6か所は半音1個分の開きしかないという、非常に特殊な形を意味しているのである。このような特殊な音階にあって、さらに各幹音が半音変位しても、それを読める音度名が存在する。それが、47の音度名が用意される意義である。なお、この際に、EとFにはフラットが付き、BとCにはシャープが付いていることも、同時に示されている。

この段階での音度名の覚え方

各音度名における、音度ごとの最初の子音に変わりはない

音位差を示す母音の分布は、やや複雑になる。

まず、基本の母音「アイウエオ」の順序が、音度によって三種類に分かれる。しかし、核になる「アイウ」の順序は変わらず、「エオ」がそのまま高い方に続くか低い方に回るかが変わる。

① 「完全」系のⅰ度・ⅳ度・ⅴ度の母音は、中央がアになる。

  • (1).E(エ)→(2).O(オ)→(3).A(ア)→(4).I(イ)→(5).U(ウ)

② 「完全」系から一つ下のⅲ度・ⅶ度の母音は、アイウエオ順そのままになる。

  • (1).A(ア)→(2).I(イ)→(3).U(ウ)→(4).E(エ)→(5).O(オ)

③ 残るⅱ度・ⅵ度の母音は、「オ」が一番下に回る。

  • (1).O(オ)→(2).A(ア)→(3).I(イ)→(4).U(ウ)→(5).E(エ)

先の25の音度名までは、音度名分布の幅が限定されてうまく隠されていたために、③のパターンだけを覚えれば全ての音度に適用できていたのであった。

これら5母音で足りないところに、残りの2母音が使われる。

全ての音度において、Ṛ (Y)(ユ)は、5母音のまとまりより、一つ低い音位に使われる。

Ḷ (Æ)(ヤ)は、ⅰ度・ⅲ度・ⅳ度・ⅴ度において、5母音のまとまりより、一つ高い音位に使われる。しかし、ⅵ度においてだけは、最も低い音位に使われる。ⅱ度とⅶ度の音度名では使われない。


まとめ

12半音ベースで、七音音階を基本とする、歌うための音度名は、この47種類が全てである。

しかし、「拡張移動サ音度名」は、まだまだこれだけではない。

他にあるのは、(a).1オクターヴ22シュルティや、1オクターヴ24四分音の枠組みに対応するための音度名、(b).八音音階以上の多音度を基本とするシステムのための音度名、(c).より微細な音律的差異を記述するための1オクターヴ106カラーをベースとした音度名、といった拡張である。

それらの拡張は膨大であるが、しかし、それぞれにやや専門的であって、一般的にどんな音楽の関係者にも有意義なものであるとは言えない。


註1)主音を文字通り「サ」とする旋法だけでなく、「シ」「ソ」「ス」「セ」で終止するのを標準としてもよいとする。(戻る)

(最終更新 

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