声楽と音度名唱

 ※音度名唱「拡張移動サ」の全体を概観するには、拡張移動サ音度名表をご覧ください。

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移動サの用語集:ナ行

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ナーダ(なーだ:nāda)

「響き・震動」。音響一般を意味しうる普通名詞であるが、インドの聖典には、神(宇宙原理=ブラフマン)の一側面として描写され、宗教的・神秘的な意味合いを持つ。

「ナーダ=ブラフマ(nāda-brahma)」は「響きという様相の神」の意味であり、それは、法悦(聖なる大歓喜)と同一で区別できないとされる。宝石とその輝きが不可分であり、輝きの源を追っていけば宝石に辿り着けるように、神とナーダも同様である、と言われる。従って、ナーダを探究し崇敬することは、神を感得し法悦を得ることに至るとされる。インドにおける宗教音楽は、単に神を讃美したり、説話を描写し伝えるだけではなく、それ自体として、神を求める修行・求道でもある。

ナーダには、2種類があるとされる。一つは、アナーハタ(an-āhata 即ち「打たれなかった」)であり、音を出す手段や原因なしの響き、宇宙それ自体としての本源的な波動である。もう一つは、アーハタ(āhata 即ち「打たれた」)であり、楽器の演奏など何らかの手段や原因があって鳴っている響きである。通常の音として聞こえる可能性のある、空気等の振動の響きは全てアーハタであり、楽音は全てアーハタとして響く。

また、声のナーダには3種類があるとされるが、即ち、下方を占めた(anudātta:胸郭の)響き、音源となった(svarita:喉の)響き、上方を占めた(udātta:頭部の)響きのことである。

ナランブ(ならんぶ:narambu)

南インドの古代タミル語において、7音音階の各音のこと。原義は「(ガット)弦」の意味。広義には、腸から蔓まで細い管状・筋状のもの一般を指し、そのうち「血管」が中心的意味。音楽用語として、サンスクリットの「スヴァラ」に比べられる。

即ち、クラル(kural)、トゥッタム(tuttam)、カイッキライ(kaikkilai)、ウライ(uzhai)、イリ(ili)、ヴィラリ(vilari)、ターラム(tāram)の7つ。これらの名称自体は、古代ギリシアの音名の場合と違って、弦楽器での弦の位置にではなく、声楽に由来していると思われる。例えば、音階第1音であるクラルとは「喉」の意味。

ニシャーダ(にしゃーだ:(niṣāda))

インドの伝統によるⅶ度音の音度名。「二(N)=スヴァラ」。スヴァラの一つ。

「低く座る・横たわる」の意味の動詞から派生して「沈降・沈澱」を意味し、最も古くにはシャドジャ音(サ(S)=スヴァラ)よりも低い最低音を意味していた。後に、上方に数えて第七音となる。漢訳で「近聞」などとする。

ニシュターナ(にしゅたーな:niṣṭhāna)

旋法のうち、メーラに対し、そこに軸音(ヴァ―ディー)と補軸音(サンヴァ―ディー)とを定めたもの。「調味料・ソース」の原義からの転用。訳して「音趣(おんしゅ)」などとする。

スヴァラの動き方の細則を定めていない分、ラーガとは呼べないが、旋法に特徴的な動きが自然と備わり、一定の雰囲気を持つ。

呼び方は、462のメーラ記号の前に、軸音・補軸音の音度名に基づく限定詞を付ける。限定詞を生成する形式は、「[軸音の音度名]+[補軸音の音度子音]+母音@e(エー)」。例えば、「al」(サリギマパディニサ)というメーラで、軸音が「リ」、補軸音が「パ」の場合は、「rip@e-al」(リペー=アル)となる。補軸音が存在しないときは、軸音の音度子音を重複して名づける。

軸音と補軸音の組み合わせは、各メーラに理論上49種ずつあるため、12半音単位の7音のニシュターナは、全部で22,638種類存在する。

二度音程(にど・おんてい:(second))

音階旋法において、隣同士の音度の構成音間の音程。

音階や旋法に応じて様々な種類があるが、拡張移動サでは概ね、最も狭い縮二度(1四分音幅)から、最も広い重増二度(4半音幅)までの範囲を、幹音同士の二度音程として用いる。

幹音同士の二度として短二度と長二度しか持たないディアトニック音階(全音階)からすると、一見自由すぎるようであるが、現に歴史上、7音旋法の二度として使われてきた範囲の音程である(参考:エンハーモニックアンガ)。また、5音旋法を考えるならば、重増二度はごくごく普通の音程である。それ故、派生音的には、累畳重増二度(6半音幅)程度までの二度の存在を容認する。

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(最終更新2010.11.23)

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