声楽と音度名唱

 ※音度名唱「拡張移動サ」の全体を概観するには、拡張移動サ音度名表をご覧ください。

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移動サの用語集:カ行

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ガーナ(がーな:gāna)

元来サンスクリットで、広く「うた」を意味する語の一つ。特には、旋律の付いていない文学的な「詩」「歌詞」を指す。

カーリー(かーりー:kālī)(1)

北インド音楽で、鍵盤楽器の黒鍵のこと。ヒンディー語等で「黒い」の女性形である。

例えば「カーリー・エーク(黒の1)」と言えば、英語式音名のC♯またはD♭の鍵盤のことであり、「カーリー・ドー(黒の2)」と言えば、英語式音名のD♯またはE♭にあたる。

対して白鍵は、サフェードという。

カーリー(かーりー:ḵhālī)(2)

北インド音楽で、空拍、即ち打音のない拍のこと。ヒンディー語等で「空っぽの」を意味する。サム(最強拍)の対義語。

ターラ(拍節法)において、概してリズム周期の中間付近に位置し、手拍子で数えるときには手を打たずに泳がせる。

ガーンダーラ(がーんだーら:gāndhāra)

インドの伝統によるⅲ度音の音度名。「ガ(G)=スヴァラ」。スヴァラの一つ。表記は「ガンダーラ(gandhāra)」とも。

今のペシャワール地方を本拠地とする、古代の王国名・地域名としてよく知られているが、なぜこれがⅲ度音の名称になったのかは定かでない。漢訳で「持地」「持香」とも。語構成を敢えて分析すると、「行くこと(√gam)」「香り(gandha)」または「歌うこと(√gai:→ガーナ(歌))」を「支える・維持するもの(dhāra)」。

開始音(かいしおん:graha)

旋法の中で、フレーズ(楽句)の始まりに使える音。グラハ〔サンスクリットで「掴むこと」の意味。把捉音〕。旋法の構成音の役割の一つ。

休止音と対になった概念。

階名(かいめい:name of each note in the scale)

音階の各構成音に付けられた名前。特定の音階の中での楽音の位置関係や音程を示す。

「ドレミファソラシ(/ティ)」は西洋音楽のディアトニック音階(全音階)の階名であるが、音名としても用いられる。アラブ音楽でもそこから派生した階名が使われる。また東アジア古典音楽での5音音階にも、伝統的な階名(五声「宮・商・角・徴・羽」)が見られる。

音階の移均・転均に伴い、音名との対応関係が変わり、旋法の転回に伴い、音度名との対応関係が変わる。

階名唱(かいめいしょう)

歌唱用の階名を用いる代音唱法

核音(かくおん)

〔→パルヴァン

拡張移動サ(かくちょういどうさ)

移動サ音度名を、北インド古典音楽の7種、南インド古典音楽16種から、増やして拡張した音度名唱。一覧表はこちら

下属音(かぞくおん:subdominant)

主音から完全四度上の音。完全ⅳ度音。移動サでは「マ」。

下属調(かぞくちょう:subdominant key)

もとの調の下属音(=マ)を主音とする、同じ旋法による調。例えば、ハ長調に対するへ長調。

下属調平行調(かぞくちょうへいこうちょう)

もとの調の下属調と同じに属するが、主音が異なり、異なる旋法による調。例えば、ハ長調に対するニ短調。

カナカーンギー(かなかーんぎー:kanakāṅgī)

カルナータカ音楽(南インド古典音楽)で、基本となる7音旋法(ジャナカ=メーラ)の筆頭。

拡張移動サ音度名で「サラガマパダナ」。全ての音度が、カルナータカ音楽の本位(シュッダ)の音程から成る。欧州音楽の楽典表現で言えば、完全ⅰ度・短ⅱ度・減ⅲ度・完全ⅳ度・完全ⅴ度・短ⅵ度・減ⅶ度・完全ⅷ度という配列の周期である。クロマティック類に属すものと言え、中世以降の欧州音楽から見ると、大いに異質な部類の旋法だが、最も基本的なマートラーの組合せ。

語義は「黄金の肢体(アンガ)を持つもの」。プールヴァ=アンガウッタラ=アンガのいずれもが最も基本的な音列を成すこのメーラの特徴を示すとともに、語頭の子音の「k」が「1」を、次の「n」が「0」を表象することで、72種類のジャナカ=メーラの筆頭に位置することを示している。

ガマカ(がまか:gamaka)

インド音楽における、旋律の装飾法(アランカーラ)のうちの一類。ガマック。本来の意味は「理解させるもの」「説明するもの」ということ。

西洋音楽の用語で言えば、主に、スライド乃至ポルタメント・前打音・ヴィブラート・ターンなどに関わる装飾。但し、例えば演歌のコブシと同様に、この音の表情や歌い回し方が、インド音楽の旋律を特徴的なものにしている。旋法の構成音が何であるかということ以上に、インド音楽の「らしさ」に貢献している要素の一つと言えるだろう。

ガマット(がまっと:gamut)

楽音の音高の、全音域にわたるセット。

当初は、ヨーロッパでの音階の最低音は「A」(ヘ音記号譜表の第1間にある「い」音)であったが、後に最低音としてその全音下が付けくわえられ、それは「G」よりオクターヴ下ということでギリシア文字で「Γ(ガンマ)」と呼ばれた。この「Γ」は、階名では常に「ut」(※後には「ド(do)」と改称される)と歌われる音であったので、それと組み合わせた「Γ ut(= gamma ut:ガンマウト)」という名称で呼ばれた。それが後に、その音から始まる音階の全音域を指す総称となった。

さらにその後、ヨーロッパ音楽の音域は大きく広がり、中世までと様相が変わってしまった中で、「ガマット」と呼ばれる内容も、いろいろ幅を持って変遷している。特定の楽器が出せる全音域を指したり、ディアトニック音階(全音階)を意味したり、更には音楽を超えて、色空間・色域のことなどにも使われるようになった。

カラー(からー:kalā)(1)

オクターヴを106に分割した音程の単位。

原義として「小部分・特に16分の1」を意味し、1カラーは、「小全音の約16分の1」に相当する。また、大全音の約18分の1。平均律の全音を16等分した十六分音よりも、若干狭い。等分した場合のセント値は、約11.321¢。但し、実際は、音程を整数比に合わせるため、±1.5¢程度の変動幅が理論に織り込まれている。単位記号としてはкを書く。漢字では「歌羅」と音写される。

他の文脈と特に区別する場合は、「スヴァラ=カラー」(即ち、旋法構成音のカラー)と呼ぶ。7つのスヴァラを平均すると、約15.14кとなり、月の朔望1日分を意味する原義に相応しい。

主な音程は、1オクターヴが106кのほか、完全五度=62к、完全四度=44к、自然長三度=34к、自然短三度=28к、自然長二度=18к、自然短二度=10кなど。特徴としては、自然中三度=31к(=振動数比40:49または49:60;いずれも約351¢)といった中立音程が表現できる点がある。

カラー(からー:kalā)(2)

アランカーラ(装飾)を施した旋律を構成する、1音または、ごく短い部分。例えば、1拍に3回ずつのヴィブラートをかけて動く旋律における、その1拍分。

カラー(からー:kalā)(3)

インドの伝統における時間の単位。現代の単位に直すと、平均して96秒。

30カーシュター=1カラー、30カラー=1ムフールタ、30ムフールタ=1日という関係になる。

カラー(からー:kalā)(4)

技芸・アート。インドの伝統では、これに64種を数える。

その64のカラーの中で、声楽が筆頭、器楽が2番目、舞踊が3番目に数え上げられる。カラーには、絵画、彫刻、塑像、演劇、物真似、武術、料理、裁縫、手芸、木工、床装飾、建築、宝飾、調香、園芸、朗読、早口言葉、詩作、推論術、暗号、パズル、ベッドメイキングなど、ありとあらゆるアートが含まれているが、その中で、声楽が最も高い地位を占め、器楽が2番目に位置する。

幹音(かんおん)

音階または旋法の運用の中で、標準となる音程を取った各構成音。旋法の各音度について原則1つずつ幹音がある。西洋音楽の文脈の中では通常、ハ均のディアトニック音階(全音階)の幹音のことを指し、それは、ピアノの白鍵で弾ける音のことである。

派生音と対になる概念。

基音(きおん)

特定の楽音の成分を成す部分音のうちで、最も低い(=周波数〔振動数〕の小さい)もの。楽音の音高は、この基音の周波数〔振動数〕に基づいて言う。

擬楽唱(ぎがくしょう)

楽器の指遣いや奏法、歌唱を含めた楽音の装飾パターンなどを、短い擬態語で対応させて歌い覚えるシステム。代音唱法の一種。

拡張移動サは、バーンスリーなどの移調楽器においては、指遣いと対応した擬楽唱的な意味合いも持つ。

機能ド(きのうど)

ドレミ音度名として使ったソルフェージュ。あまり一般的でないが、移動ドから区別するために、一部でそう呼ばれるようになった。和音の機能感覚を覚えることを意図する。

移動サのドレミ版である。

移動ドと同じようにが変わると音高に対してドレミが移動するが、同じ均で主音が変わっても移動する。ハ長調で「ハ」が「ド」に対し、調号(均号)でシャープ一つのト長調は「ト」が「ド」になるのは移動ドと同じであるが、同じ調号(均号)のホ短調では「ホ」が「ド」になる(<移動ドでは「ト」が「ド」)。

休止音(きゅうしおん:nyāsa)

旋法の中で、フレーズ(楽句)の終わりに使える音。ニヤーサ〔サンスクリットで「下に置くこと」の意味。放擲音〕。旋法の構成音の役割の一つ。

開始音と対になった概念。

教会旋法(きょうかいせんぽう:church mode)

中世ヨーロッパのグレゴリオ聖歌で完成した旋法群。いずれもディアトニック音階に属するが、主音(終止音・フィナリス)・軸音(テノール/ドミナント)及び標準音域が互いに異なる。また、互いに特徴的な旋律や和声の動き方がある。

(1)ドーリア旋法・(2)ヒュポドーリア旋法・(3)フリギア旋法・(4)ヒュポフリギア旋法・(5)リディア旋法・(6)ヒュポリディア旋法・(7)ミクソリディア旋法・(8)ヒュポミクソリディア旋法の8種類(オクトエコス)が、中世を通じて公式に用いられた旋法である。

また、ルネサンス期の16世紀に入って、(9)エオリア旋法・(10)ヒュポエオリア旋法・(11)イオニア旋法・(12)ヒュポイオニア旋法の4種類が追加された(後のいわゆる「短調・長調」のもと)。また、理論上の旋法としてロクリア旋法ヒュポロクリア旋法があるが、公式なものではなく、当時の聖歌に用いられてもいなかった。

なお、これらの旋法名は、古代ギリシアの旋法名に由っているが、命名当時の誤りにより、実際には古代ギリシアの旋法とは全く異なる旋法に対応している。よって、混乱を避けるために、ギリシア由来の旋法名を使わず、第Ⅰ旋法から第Ⅻ旋法と番号で呼んだり、「正格プロトゥス」「変格テトラルドゥス」といった別の古い名称で呼んだりすることが勧められている。

協和(きょうわ)

二つ以上の楽音が融け合うように調和して聞こえるとき、それらは協和すると言い、そのような音程を協和音程と呼ぶ。逆に、反発・緊張して聞こえるときには、不協和であると言い、そのような音程を不協和音程と呼ぶ。協和音程の中にも、完全協和音程と不完全協和音程が区別される。和音に関しても同様に呼ぶ。

一般に、互いに共通の倍音を多く持つ音ほど協和すると言われ、そのためには構成音の基音の周波数〔振動数〕がなるべく単純な整数比で表される関係が望ましいとされるが、人間の耳には周波数の小さ過ぎる違いは十分認識できない(同一音と知覚される)し、錯覚や、楽器の共鳴における様々な現象があるため、純粋に数学的にそうなるわけではない。

また、「長三度」とか「短七度」といった音程の表現が同じでも、音律や、その音律の中のどの音同士の関係を指しているかによって厳密な音程は異なるため、協和の度合いも一様ではない。

(きん)

音階音高を特定したもの。下記の音程関係の分析により選ばれる、音階の中での特定の構成音(「均基準音」。ディアトニック音階(全音階)ならばドレミの「ド」に当たる)の音高を基準として、その音名を取って「○○均△△音階」と呼ぶ。

五線譜における「調号」は、調ではなく、ディアトニック音階(全音階)における均を指定するものである。そう結論する理由は、主音がどこかを指定していないので、同じシャープ1つの調号でも、ト長調とホ短調が書き表わせる(=調が確定しない)からである。

<均基準音の選び方>:昇行終止基準/1オクターヴ周期性音階の場合

(1) 音階の幹音のうちから、下方の二度音程が最も狭いものを選ぶ。

(2) (1)で同じになった幹音がある場合は、下方の三度音程が最も広いものを選ぶ。

(3) (2)でも同じになった幹音がある場合は、下方の四度音程が最も広いものを選ぶ。

(4) (3)でも同じになった幹音がある場合は、下方の五度音程が最も広いものを選ぶ。
 同様にして、下方に同じ度数の音程が広くなる音を探していく。

(5) この方法で1オクターヴ内にどうしても決められない候補音が複数残る場合には、実はそれはオクターヴより狭い周期のある音階(移均の限られた音階)である。残ったうちのどれを選んでも同じであるが、D音(ニ音)を基準にして、上方に最も近い位置にあるものを均の基準音とする。

なお、東アジアの伝統的階名である「十二律」における均基準音は、昇行五度堆積基準によって決められるため、上記とは異なる。昇行五度堆積基準は、音階構成音のそれぞれから、上方に完全五度を堆積していったとき、最も早く他の構成音を導き出せる構成音を、均基準音とする。従って、ディアトニック音階(全音階)ならば、ドレミの「ファ」に当たる音が均基準音となる。この基準では、四分音を含む音階の均基準音を決めるのに困るため、このサイトでは昇行終止基準を採用した。

近親調(きんしんちょう:related key)

近い関係にある調属調下属調平行調同主調属調平行調下属調平行調のこと。

対義語は遠隔調。

クシティ(くしてぃ:kṣiti)

インド音楽におけるシュルティ名で、音階基準音から上方に14番目の音程。原義は「大地」を意味する女性名詞。また、別名をクシャマー(kṣamā)といい、その原義は「忍耐」「寛容」または「大地」を意味する女性名詞。

音程幅は学説により、約70.7¢または約92.2¢。ジャーティは、ムリドゥ。

クショービニー(くしょーびにー:kṣobhinī)

インド音楽におけるシュルティ名で、音階基準音から上方に22番目にあたる、周期上の最後の音程。原義は「震動/激情を持つ」の女性形。

音程幅は学説により、約90.2¢または約27.3¢。ジャーティは、マディヤー。

クムドヴァティー(くむどゔぁてぃー:kumudvatī)

インド音楽におけるシュルティ名で、音階基準音から上方に2番目の音程。原義は「白睡蓮を持つ」の女性形。

音程幅は学説により、約70.7¢または約38.1¢。ジャーティは、アーヤター。

グラーマ(ぐらーま:grāma)

古代インドの音楽における、22のシュルティから拾い出された、原則7つの幹音から成るスヴァラ群。サンスクリットで元来「村」乃至は「群(むれ)」を意味し、訳すなら「音群(おんぐん)」とすることを提案する。〔シュルティの名称一覧は、「22個のシュルティ」を参照〕

互いに微分音的差異のあるディアトニック音階が3種類あり、それぞれがグラーマと呼ばれた。シュルティは、一説によればそれら微分音的差異を簡潔に説明できる最小公倍数的構造の配列になっており、インド本来の3つのグラーマ(その1つは純正律)に加えて、古代ギリシア由来で古代東アジアにも共通なピタゴラス律も導き出すことができる。

各グラーマの音程を、長旋法「ドレミファソラシド」に聞ける順に並べてセント値(推定値)で挙げる。(※本来の標準旋法では互いに主音が異なり、ドから始まるようには聞こえない)

・ガ=グラーマ:204・182・134182204182・112(¢)

・マ=グラーマ:204・182・112・204・182・204・112(¢)

・サ=グラーマ:204・182・112・204・204182・112(¢)

・ピタゴラス律:204・20490 ・204・204・204・90 (¢)

マ=グラーマが狭義の純正律であり、他の音律でオリーブ色にした数値はそれと異なる部分である。ガ=グラーマは純正三度堆積型で、ド―ミ―ソ―シ―レ―ファ―ラ間の6つの三度音程が純正音程の反面、ド―ファ間の完全四度が純正より広い。サ=グラーマは、ソ―ド間のアンガの音程の並びを、ド―ファ間と全く相似形に変更したもので、純正音程は減るが、旋律形は美しくなる。ガ=グラーマとマ=グラーマの折衷にも当たる。ピタゴラス律は五度堆積型で、全ての全音が大全音で、半音がいずれも狭い。三度はどこも協和性が低い反面、旋律の輝かしさに定評があるが、インド古典音楽では使われていない。近現代のインドの標準は、サ=グラーマである。

3つのグラーマに関しては、「ド」に対する「レ・ミ・ソ・シ」の音程は共通で、「ラ」と「ファ」の位置がシントニック・コンマ1つ分ずつ異なるだけである。

クローダー(くろーだー:krodhā)

インド音楽におけるシュルティ名で、音階基準音から上方に9番目の音程。原義は「怒り・忿怒」の女性形。

音程幅は学説により、約90.2¢または約56.8¢。ジャーティは、アーヤター。

クロマティック(くろまてぃっく:chromatic)

「半音階的な」。

もと、ギリシア音楽のテトラコード(ゲノス)の種類の名称で、<半音(短二度)+半音(短二度)+3半音(増二度)>で完全四度を成す。

これを二つ重ねた「サラガマパダナサ」の形の旋法は、南インドのメーラ名では、「カナカーンギー」と言う。

ディアトニックエンハーモニックと組になる概念。

コードネーム(こーどねーむ:chord name)

和音の種類を、その根音の英語式音名や残りの構成音との音程関係をもとに表す、記号およびその読み方。特に、三和音四和音、及びそれらからの派生として分析される和音について示す。

例えば、C、Am、G7、Dm7、といったもの。

コーマル(こーまる:komal / komala)

インド音楽で、「フラット」のこと。原義は「柔かい・柔和な」。サンスクリットの発音では「コーマラ」と読む。

シュッダヴィクリタティーヴラなどと組になる用語。

コダーイ・メソッド(コダーイ・システム)(こだーい・めそっど:Kodály method)

20世紀に、ハンガリーの作曲家コダーイ=ゾルターンが研究・実践し広めた音楽教育システム。

トニック・ソルファ法の研究を踏まえており、ハンドサインやリズム名唱など共通点が多い。ドレミを拡張した派生音階名の読み方も、フラット系の母音の発音が「ア」になる以外は、ほとんど同じである。

固定ド(こていど:fixed do)

ドレミ音名(実際にはピッチクラス名)として使ったソルフェージュが変わっても音高とドレミの関係が固定されて、そう呼ばれる。例えばハ長調では「ハ」音が「ド」であるが、ト長調でも「ハ」音が「ド」になる。

根音(こんおん:root)

三和音四和音、及びそれらからの派生として分析される和音において、三度音程の積み重ねの一番底に当たる構成音またはピッチクラス。音程関係が転回されている場合は、基本形に戻したとして考える。

和音の中で最も重要な音とされ、コードネームを決める基準となる。構成上、根音から三度上の構成音を「第三音(三音)」、五度上の構成音を「第五音(五音)」、七度上の構成音を「第七音(七音)」などと呼ぶ。

コンマ(こんま:comma)

音律を作る上で、別々の操作によって計算された音程の間の、微細だけれども耳に感知される差。その一部が、コンマと呼ばれる。異なる素数それぞれの冪乗には決して互いに共通のものがないという数学的事実に基づくもので、コンマの存在が、音律が様々に分かれる大きな要因の一つになっている。コンマには下の2種がある。

ピタゴラス=コンマ(pythagorean comma)は、「完全五度(周波数比〔振動数比〕2:3)を12回積み重ねたものの6オクターヴ下」の、「完全八度(周波数比〔振動数比〕1:2)」との間の差異で、周波数比〔振動数比〕は524,288:531,441、セント値は約23.46¢。

シントニック=コンマ(syntonic comma)は、「完全五度(周波数比〔振動数比〕2:3)を4回積み重ねたものの2オクターヴ下」の、「自然長三度(周波数比〔振動数比〕4:5)」との間の差異で、周波数比〔振動数比〕は80:81、セント値は約21.51¢。「大全音」と「小全音」の間の差に当たる。

これら両コンマ同士の差異は耳に感知しえないほどわずかであり(2¢弱)、1オクターヴを53等分した値(約22.64¢)で近似できることから、オクターヴを53分割する音律理論の根拠になっている。この場合、大全音は9コンマ、小全音は8コンマ、純正律の大半音は5コンマ、ピタゴラス律の幹音間の半音は4コンマなどと表される。

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(最終更新2012.11.21)

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