代音唱法の考察

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類・均・種・調・格(1)

既に見てきたように、音名・階名・音度名などが、私たちの身近に知られている音の呼び名(音称)である。これらの呼び名は、音階や旋法の、種類や構造と、どのような関わりがあるのだろうか。は、音階の種類についての概念であり、調などは、旋法の種類についての概念である。それらの概念と、音の呼び名との関係について考察する。

類とは

音階において、その音型の側面をと呼ぶ。

いわゆる長音階と、自然短音階とは、実は同一の類の音階の、別個の種である。全音を「全」、半音を「半」と略したときに、いわゆる長音階は「全全半全全全半」という音程の並びであるが、これを繰り返す「全全半全全全半全全半全全全半全全半全全全半全全半全全全半……」という並びの音型は、自然短音階の「全半全全半全全」という音程の並びの繰り返しにも読み替えることができる。従って、両者は同じ類なのである。ディアトニック類、或いは英語風にダイアトニック類と呼ばれる。ヨーロッパのいわゆる教会旋法も全て、この類の音階に属する。

オクターヴ周期の七音音階で、半音を単位とする音程を持つものは、このディアトニック類を含めて66類ある。ディアトニック類が極端によく普及しているために、他の類があることは、音楽を特に好きでない人には意識されないことも多いと思われる。しかし、南インド古典音楽において、旋法の基本分類は72種類あるが、それらはその66類のうちで36種の類を使っているのである。

実際には、オクターヴ周期でない音階や、五音・六音・八音・九音等の音階、微分音を使う音階などもあるのであるから、可能なの総数を数え尽くすことはできない。

均とは

音階において、各は、その音型・音程関係を保ったまま、全体を高低に移動することができる。その高低の位置のことを、と呼ぶ。

各類において、どの音程関係の音を、均を呼ぶときの基準とするかを定めておき、その基準の音(均基準音)の音名が何かによって、均の種類を名づける。例えばディアトニック類であれば、均基準音はドレミの「ド」とする。例えば、いわゆるハ長調とイ短調は同じハ均に属し、変ホ長調とハ短調は同じ変ホ均に属するということになる。基本的には、同じ調号(均号)の調は同じ均に属する。

他の類についてであるが、私は、オクターヴ周期半音単位の全ての七音音階・五音音階について、統一的な均基準音の決め方を考案してあり、それを昇行終止基準と呼ぶ。必ずしも、最も頻繁に主音として使われる音が均基準音となるわけではないが、一意的に均基準音を定めることができる。但し、例えば、ハ均であるハ長調のヨナ抜き(ファ・シの削除)をすると、類が陽類に変わることによって均基準音がドレミの「レ」の音に移るため、調号が変わらないのにニ均となる。

均の近縁関係は、均基準音の音程の遠近ではなく、音高として共通する構成音の多い・少ないで決める。オクターヴ周期の七音音階であれば、六音が共通する均が最も近縁で、一音も共通しない均が最も遠縁ということになる。ディアトニック類の場合は、その関係は五度圏で測ることができるが、他の類の場合はそうではない。

種とは

音階の中で、どの音をその旋法の主音とするかを、旋法の(またはオクターヴ種)と呼ぶ。

各音階には、その構成音の数だけ、種がありうる。各類の均基準音を主音とする場合を第1種と名付け、そこから高い方へ主音を移すごとに順に第2種・第3種……と呼ぶこととする。例えば、いわゆる長音階は、ディアトニック類の中の第1種であり、自然短音階は、同じ類の第6種である。教会旋法では、第2種~第5種が最初期から使われていた。

類・種と、相

が決まれば、旋法の主音とその他の構成音との音程関係が決まる。その音程関係の全体を旋法の相(旋相)と呼び、旋法内の各楽音の音程関係を楽音の相(音相)と呼ぶ。

調とは

旋法の主音の音高(音名)を、旋法の調(またはキー)と呼ぶ。

均・種・調の関係

特定のの中であれば、均・種が定まれば、おのずから調は決まる。また逆に、均・調が定まれば、は決まるし、種・調が定まれば、が決まる。均・種・調は、特定の類の中であれば、どれか2つが定まると残りの1つが決まる関係にある。いわゆるハ長調・イ短調などと言うときの「長・短」は、相(類と種)についての表示であって、実際に調を指し示す「ハ・イ」と合わさることで、均を明示しなくとも、旋法を特定しているのである。

格とは

特定の旋法の中での、各構成音の役割・使われ方の分布をと呼ぶ。

特に、支配音がどこか、節音がどこか、主音以外の休止音がどこか、主音に対して旋律形がどのように分布するかといったことは、楽曲の雰囲気に大きく影響するため、ヨーロッパの教会旋法でも、インドのラーガでも、格が違うことによる旋法の区別が見られる。ただ、どの程度違えば別個の旋法と数えるのか、という線引きは難しく、各文化圏はおろか、音楽家によっても解釈が変わる。

(つづく)


(最終更新2012.11.18)

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