代音唱法の考察

大歓喜トップ >> 代音唱法の考察 >> 音程・音階・階名(1),(2),(3),(4),(5)

音程・音階・階名(2)

音階の中でも代表的な、オクターヴ周期性の音階について、もう少し詳しく考察しておこう。

オクターヴ周期性の音階

音階のうちで、1オクターヴ周期で同じ音型を繰り返すものを、オクターヴ周期性の音階と呼ぶ。

オクターヴというのは、ヨーロッパ系音楽の用語で、音程の表現で言えば完全八度、振動数(周波数)で言えば1:2の関係にある二つの音の音程を指す。或いはまた、その間に挟まれた音域を意味する。ラテン語のオクト(octo)が「8」の意味で、オクターヴは文字通りには「8つから成るまとまり」である。

ヒトは、振動数比がより単純な整数比の音ほど、よく馴染み融け合った音・協和する音と感じるとされるが、オクターヴの関係は、同じ高さの音同士に次いで、ヒトにとって協和性の高い関係である。明らかに高さの違う音であるのに、同じ種類・同じ色合いの音が巡ってきたと感じ、しばしばオクターヴ差のある音と混同したり、分離して聞き分けられなかったりするのである。

そういうこともあり、多くの音楽文化で、オクターヴの関係は特別なものである。基本音階をオクターヴ周期で考えることは、ヨーロッパのみならず、支那でも、インドでも同様である。但し、インドではサプタクと呼んでいて、これは「7つから成るまとまり」の意味である。後述するが、ヨーロッパでは同じ高さの音を一度と数えるのに対し、インドではその音程差をゼロとするところから、この違いが生じている。

オクターヴあたりの構成階名数

オクターヴ周期性の音階では、多くの場合、オクターヴ周期で元に戻る階名が付けられる。

その場合に、階名が7つ必要な音階ならば七音音階(ヘプタトニック)と呼び、5つ必要な音階ならば五音音階(ペンタトニック)と呼ぶ。他の数でも同様であるが、ここに7と5をまず挙げたのは、これらが実用される音階として、勢力のある存在だからである。仮に、オクターヴを12個の半音に区切り、その半音単位で、階名が幾つのときに何種類の音階を作れるかを計算してみるとしよう。すると、二度でオクターヴの半分を超える幅のものは存在しえない前提では、66種類作れる7音音階の場合が最も多い。5音音階では、61種類となる。逆に、階名の数が多すぎたり少なすぎたりすると、作れる音階の種類が減る。

実際のところ、音階で実用されているのは、概ね、五音から九音のものである。八音や九音の音階は、実践上、上昇音形と下降音形で、使われる音が異なる旋法となるタイプのものが多く(例えばいわゆる「旋律的短音階」)、上昇か下降かどちらか一方を取り出すとすれば、概ね七音までに収まる。

俗説的に、ヨーロッパは七音音階、アジアは五音音階という対照が言われることがあるが、これは、日本の状況をアジアにまで広げた誤りである。

アジアでも、インドなど、七音音階が標準とする楽典を持つ音楽文化圏が広く存在する。また、五音音階が理論上標準であっても、七音音階も認め使われる文化圏(支那など)も存在する。日本という、五音音階の勢力が強い地域の伝統音楽にあっても、七音音階や、転調の理論は知られており、決して五音に限って使われてきたわけではない。他方で、ヨーロッパでも、民謡では五音音階を使ってきた地域も存在する。

(つづく)


(最終更新2011.11.30)

大歓喜トップ >> 代音唱法の考察 >> 音程・音階・階名(1),(2),(3),(4),(5)