声楽と音度名唱

 ※音度名唱「拡張移動サ」の全体を概観するには、拡張移動サ音度名表をご覧ください。

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ドレミと発音の似た音度名

「拡張移動サ」は、数多くの音度名を持つため、その発音がしばしば、他の音楽用語と同じだったり類似となっている。ここでは、その例を数え上げ、それが問題かどうかを考える材料を提供したい。

通常のドレミとの関係

次の表は、最も普通に使われるドレミとの関係である。

なお、ドレミで「ティ」というのは、「シ」の英語式の読み方であり、有名なミュージカル『The Sound of Music』の「ドレミの歌(Do-Re-Mi)」でも「ティ("ti"→"tea"に掛ける)」とされている。

ドレミでの綴り カナ表記 移動サでの綴り 移動サでの音度・音段 左の列の表現をドレミで言うと……
ti ティ ṭhi / #thi 増6段 (ファを主音としたときのシのシャープ /
シを主音としたときのファのシャープ)
si si 増ⅰ度 長音階のドのシャープ /
短音階のラのシャープ
la ra 短ⅱ度 長音階のレのフラット /
短音階のシのフラット
sol / so so 減ⅷ度 長音階のドのフラット /
短音階のラのフラット
fa ファ fa / ¥pha 伸増ⅳ度 長音階のファのシャープ=アンド=ア=ハーフ /
短音階のレのシャープ=アンド=ア=ハーフ
mi mi 増ⅳ度 長音階のファのシャープ /
短音階のレのシャープ
re re 重増ⅱ度 長音階のレのダブルシャープ /
短音階のシのダブルシャープ
do dho 減ⅵ度 長音階のラのダブルフラット /
短音階のファのダブルフラット

厳密に言うと「la」は欠けており、「fa」は移動サを最大限に拡張した場面でしか登場しないが、カナ書きレベルでは、ドレミの全てに同発音・類似発音の音度名があると言える。

だから、前提なしに一音だけを用いた場合には、大いに誤解を招く恐れがある。その一方で、実際に音度名唱をしている場面や、十分な文脈がある場合には、混乱することは稀である。

その理由は、移動サの長音階は「サリグマパディヌサ」、自然短音階は「サリギマパダニサ」であって、長音階や短音階の幹音には、ドレミと重なる音がないためである。ドレミと混乱する移動サ音度名が出てくる前後には、大抵、ドレミと明らかに違う音度名が数多く使われており、それがドレミを使っている場面ではないことを示していることだろう。移動サを使っているときには、通常、ドレミでは重要な「ド」や「ソ」「ファ」「レ」といった名前は滅多に出てくることがなく、その代わりに「サ」や「パ」「マ」などが頻出することで、文脈の違いが明示されるのである。

しかしながら、実用上、ドレミと最も混乱しやすいのは「ミ」である。ドレミで言うと長音階のファのシャープ、または短音階のレのシャープに相当するこの音は、属音「パ」への導音として実際の楽曲に比較的頻繁に登場する。

その次に混乱しやすいのは、「シ」である。原則として主音の動かないインド古典音楽ではありえないことだが、西洋近代音楽に基盤を置いた音楽では、全音上の調に部分転調することは稀ではなく、主にその主音「リ」への導音として登場する。


(最終更新2010.10.28)

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