声楽と音度名唱

 ※音度名唱「拡張移動サ」の全体を概観するには、拡張移動サ音度名表をご覧ください。

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拡張移動サの仕組み(4)

第2段階:近代西洋音楽への対応(2重の半音階)

基準音 +1 +2 +3 +4 +5 +6 +7 +8 +9 +10 +11
ネ・サ・ロ シ・ラ リ・ガ ル・ギ グ・モ ゲ・マ ミ・ポ パ・ド ピ・ダ ディ・ナ ドゥ・ニ ヌ・ソ

第2段階では、母音は3種類から5種類に増える。

・子音:S,R,G,M,P,Dh,N

・母音:O,A,I,U,E

追加された母音は、O,とE,であり、O,はA,より半音下、E,はU,よりも半音上の変化音である。

この「O」→「A」→「I」→「U」→「E」という順序は、第2段階の中では一貫している。

「サ・ラ・マ・パ・ダ」の半音下は、それぞれA,をO,に替えて「ソ・ロ・モ・ポ・ド」になるし、
「グ・ヌ」の半音上は、それぞれU,をE,に替えて、「ゲ・ネ」となる。

2つの新出母音のうち、より歌い易いO,音のほうが、より出現頻度が高いことに注目しよう。母音の並ぶ順序は、日本語やインドの諸言語の母音配置順「アイウエオ順」から素直に連想することができる。

それでは、第2段階の拡張によって、一体何ができるのだろうか。

それは、主音「サ」を基準にして、近代西洋音楽の表記で通常書かれる全ての音程(にあるピッチクラス)を、五線譜のままに音度名で読み上げることができるのである。

次の表を見てみよう。

  完全
ⅰ度,ⅷ度
ⅱ度
ⅲ度
ⅳ度
ⅴ度
ⅵ度 ディ ドゥ
ⅶ度

これは、上の表と同じ25個の音度名を、音度名本来の観点で並べ直したものである。

通常の近代西洋音楽で使われる、完全、長・短、増・減、の音程関係が、オクターヴにわたって全て網羅されていることが分かるであろう。

因みに、背景が緑色の部分が、第1段階の16個の音度名であり、増・減音程で抜けていた黄色の部分が、第2段階で拡張・補充された部分である。

このように、常識的な範囲であらゆる音程が想定されているので、五線譜上でその時、主音がどこに相当するかが決まりさえすれば、その音階や旋法が何であれ、書いてある通りの関係の音度名を見つけて振ることができるということである。

もっとも、主音を判定することが困難な曲も少なくない。しかし、その場合でも、仮に何らかの意味で中心・核となりそうな音を「サ」と定めさえすれば、同じように残りの音度名を機械的に付けられるということである。


第3段階:半音単位での、偏った旋法への対応(4重の半音階)

〔※ここで言う「偏った旋法」というものの例や、それを拡張移動サでどう表すかについては、「66種の7音ヴァラヤ」及び「462種の7音メーラ」のページを参照。〕

基準音 +1 +2 +3 +4 +5 +6 +7 +8 +9 +10 +11
ネ・サ・ロ ノ・シ
ラ・ギュ
ス・リ
ガ・ミュ
シャ・ル
ギ・メ
レ・グ
モ・ピュ
ゲ・マ
ペ・デャ
ゴ・ミ
ポ・デュ
ギャ・ム
パ・ド
ミャ・ピ
ダ・ニュ
プ・ディ
ナ・シュ
ピャ・ドゥ
ニ・セ
デ・ヌ
ソ・リュ

第3段階では、母音が更に2つ増えて、子音と同じ7種類になる。

・子音:S,R,G,M,P,Dh,N

・母音:$R,O,A,I,U,E,$Ai

追加された母音そのものは日本語には無い音だが、「$R」は「ユ」、「$Ai」は「ヤ」を使って、拗音で対応する。普通の日本語の範囲内の音が殆どであり、これらの追加によって、日本人にとって特に発音や聞き分けが難しくなることはない。

第3段階の拡張音度名についても、第2段階と同様、音度ごとに並べ直した表を掲げる。

  畳重減 重減 完全 重増 畳重増 〔母音の順序〕
ⅰ度,ⅷ度 シュ シャ $R→E→O→A→I→U→$Ai
ⅱ度   リュ   $R→O→A→I→U→E  
ⅲ度   ギュ ギャ $R→A→I→U→E→O→$Ai
ⅳ度 ミュ ミャ $R→E→O→A→I→U→$Ai
ⅴ度 ピュ ピャ $R→E→O→A→I→U→$Ai
ⅵ度 デャ デュ ディ ドゥ   $Ai→$R→O→A→I→U→E
ⅶ度   ニュ   $R→A→I→U→E→O  

見ての通り、各音度の音程の幅がさらに広がり、それぞれ四度幅にも相当する柔軟性を持つようになっている。これは、短二度が四つも五つも連続したり、重増二度や畳重増二度という長三度や完全四度に匹敵する広い幅の二度があったりと、長調や短調といった旋法からは考えられない偏りのある旋法を歌えるようにするための拡張だからである。

音度名の分布は、あくまで「サ」を中心に高低対称となっており、均等に分布しているが、母音の順序の統一性はやや崩れて、音度ごとにパターンが分かれている(表参考)。これは、使用する母音をこれ以上増やさないようにするために、余り使われない音度名での規則性を犠牲にしたからである。

規則は次のように考えられる。

 ・第1段階・第2段階で既に有った音度名は、第3段階でも変更ない。

 ・母音「A→I→U」の順序は、高低関係を含めて常に維持される。

 ・5母音「O・A・I・U・E」は、常に隣接して並び、「$R・$Ai」はその外側に拡張される。

 ・5母音の順序は「O→A→I→U→E」「E→O→A→I→U」「A→I→U→E→O」の三種ある。

 ・互いに隣接した5母音の塊に対する半音下は、常に「$R」である。

 ・完全系の音度(ⅰ・ⅳ・ⅴ・ⅷ)では「$R→E→O→A→I→U→$Ai」。

 ・完全系の1度上(ⅱ・ⅵ)では「($Ai→)$R→O→A→I→U→E」。

 ・完全系の1度下(ⅲ・ⅶ)では「$R→A→I→U→E→O(→$Ai)」。


(最終更新2010.5.9)

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