声楽と音度名唱

 ※音度名唱「拡張移動サ」の全体を概観するには、拡張移動サ音度名表をご覧ください。

大歓喜トップ >> 声楽と音度名唱 >> 22,638の7音ニシュターナ

22,638の7音ニシュターナ

「462種の7音メーラ」で述べた各メーラに対し、それぞれ、軸音(ヴァ―ディー)と補軸音(サンヴァ―ディー)とを定めることで、ニシュターナが構成される。即ち、主として使う音を、主音と合わせて最大3個まで順序立てて指定し、それにより、印象に残る音程や、音の動き方をある程度画定したものである。

特殊な例として、軸音が主音と同じで、それに対立する補軸音も無い場合、即ち非常に高い割合で「サ」が続き、その間の不規則な動きとして上下しては中心音「サ」に戻るような旋法の場合であるが、その場合の命名法は、軸音「サ」・補軸音「サ」と指定する。

ニシュターナの呼び方・表記法

各ニシュターナの呼び方は、462のメーラ記号の前に、軸音・補軸音の音度名に基づく限定詞を付ける。限定詞を生成する形式は、「[軸音の音度名]+[補軸音の音度子音]+母音@e(エー)」という形である。例えば、「al」(サリギマパディニサ)というメーラで、軸音が「リ」、補軸音が「パ」の場合は、「rip@e-al」(リペー=アル)となる。補軸音が存在しないときは、軸音の音度子音を重複して名づける。もし「al」の軸音が「パ」で補軸音を欠く場合は、「pap@e-al」(パペー=アル)となる。

ニシュターナの種類と数

主音・軸音・補軸音は、同一でも構わないため、各メーラに対し、理論上各49種のニシュターナが存在しうる。しかし、音楽的満足の観点から、実際に使われるニシュターナは限られる。

メーラ名に加えられるニシュターナ用の限定詞は、軸音に立ちうる音度名が数多いために、全部で315種類が立てられうる。しかし、実用という観点で、スヴァラの組み合わせという数え方をすれば、実際にはせいぜい20種類ほどしか用いられない。典型的に用いられるのは、わずか12種類である。

「S-M」「S-P」「R-P」「R-D」「G-D」「G-N」「M-N」「M-S」「P-S」「P-R」「D-R」「D-G」

これらは、まず、導音になりがちな「N-svara」を除く、6つのスヴァラを軸音として立て、次に、それぞれの軸音から、四度または五度になる関係のスヴァラを補軸音としたものである。オクターヴを区切るには、四度と五度でほぼ均等なアンガに分割して旋律の枠組みとするのが最もバランスが良く、古代ギリシア音楽の旋法の組み立て方を見ても、またインド古典音楽の軸音・補軸音の実例を見ても、このような構造の旋法が大多数であることが分かるであろう。

N-svaraを軸音とする旋法は例外的である。また、軸音・補軸音によるオクターヴ分割が、四度/五度ではなく、三度/六度分割になる旋法は、数は少ないが、まだ比較的普通に用いられる。それに対し、二度/七度になる旋法は、軸音に対して普通なら違旋音になる関係に補軸音が来るため、非常に稀である。ありうるケースは、軸音または補軸音と、主音が一致する場合で、実質上、一つの中心音が二度の幅で上下するような構造の旋法であり、それは実際に存在する。他に、軸音と補軸音の間の二度が非常に広く(重増二度・畳重増二度・累畳重増二度など)、実質的に三度または四度である場合も考えられる。

逆に純粋に理論上から言えば、12半音単位でオクターヴ周期の7音ニシュターナは、
462(メーラの数) * 49 = 22,638種類存在する。


(最終更新2010.10.4)

大歓喜トップ >> 声楽と音度名唱 >> 22,638の7音ニシュターナ